読後感想文〜書評show〜

フィクション大好き!こよなく本を愛するLULUがありのまま、感じたままに本を紹介します。好きな作家は、吉田修一さん、津村記久子さん。

2017年01月

木内一裕著「嘘ですけど、なにか?」を読みました。

出版社編集部員の亜希は頭の回転が早く、その機転でわがままな作家たちを手なずけてきた。
ある日、ドラマのように知り合った男待田はどうやらエリート官僚。酔いに任せてそのまま関係を結んでしまうが、亜希には迷いが出てしまう。そんなある日、彼の家でとんでもない会話を聞いてしまい・・・

最初は勝気な女の恋愛ストーリーかと思いきや、とんでもない事件が起こり、待田と亜希の関係性がどんどん変化していくのが面白い心理ミステリー。
亜希は口からスラスラ出てくる言葉を巧みに使い、これまでの危機を乗り切って来たのだけれど、今回は少々相手が悪過ぎた。
何とか事態を有利に進めるよう機転を利かせるのだけれど、そこに様々な人間模様が絡み、まるで短編を読み繋いでいくように人々の関係が交錯する展開に、読むスピードも上がっていきました。
それにしても、亜希の鋭い洞察力に感心するシーンもしばしば。怖いくらいに人の心理を操作するのがうまい亜希には尊敬すら覚えます。
こんな風に仕事ができたら、楽しいんだろうなぁ。







おしゃれな装丁ですね。
彼の作品はまた別のものも読みたくなりました。

書評というほどでもないけれど、AAAのデビュー11周年を記念して出されたオフィシャルブック「あのとき、僕らの歌声は。」を読んだので記しておきます。


 

エイベックス所属の男女混合メンバーとして、レコード大賞の最優秀新人賞を獲得した彼ら。 それからの11年の葛藤を、メンバーそれぞれの視点から時系列で追っていく本作。
それぞれの賞には、AAAの楽曲タイトルが付けられており、「メンバーのインタビューを元にして作られたフィクション」ということですので、全てが本当ということではないのかもしれないけれど、エピソードを追っていく限り、AAAの成り立ちやそれぞれの気持ちなどが伝わってくる作品でした。

エイベックスのオーディションを勝ち抜いた人達だけが残り、レッスンをする日々。
その中で、「デビューできるのはたった一人」だという意識のもとに、みんなライバルだと思ってやってきた人達とある日突然「男女混合ユニットとしてデビューする」と告げられた時の戸惑い。
デビュー目指して活動するも、なかなか具体的に物事が進まない。そんな不安の中でようやくデビューし、たった三ヶ月でレコ大の最優秀新人賞を獲得。夢のようなスタートを切ったもののヒットに恵まれず、ただ忙しい毎日の中でいかに自分らしく輝けるかを模索していくそれぞれのメンバーたち。

このレコ大新人賞の時の記憶がおぼろげにあるのですが、それから本格的に楽曲を聴くようになるまで数年。私が好きだと公言する頃には名古屋でも2日間の公演をするほどになっていたので、苦悩の日々の実感はあまりなかったのですが、メンバーの意識が固まって今のような雰囲気になるまでに相当葛藤があったのだろうなと推測しました。

AKBやEXILEのように「メンバーになりたくて」応募したわけでもない。バンドのように声を掛け合って一緒に始めたわけでもない。生まれた場所も違えば、それぞれがソロデビューを夢見て応募してきた人ばかり。たまたま最終審査まで残って、一緒にレッスンをしたライバル同士。そのメンバーが走ってきた11年のほんの一部分を垣間見た一冊でした。

それにしても15周年の小説出す時には、いやNissyの小説出す時にはぜひ声かけて欲しい〜(笑)

 

貫井徳郎著「愚行録」を読みました。

愚行録 (創元推理文庫)
貫井 徳郎
東京創元社
2012-10-25



インタビュー形式で語られる本作。
内容は、一年前自宅で惨殺された一家について。犯人は幼い子供二人と夫婦を次々に手にかけ、相当浴びた返り血をその家の風呂場で洗い流した後に着替えを持って逃走していた。犯人についての特定は難航し、何人もの記者やライターが事件について調べている。インタビューに答える人々は、理想的と報道された幸福な一家を知るものたち。
ある人は学生時代の夫について語り、ある人はママ友である妻を語る。 その中から浮かびあがる夫婦の姿。誰が犯人なのか、そして誰にもある裏の顔が見え隠れする時、ニュースで語られない理想的な家族の真実とは。


夫は早稲田を卒業し、大手不動産会社で働くスマートな男。妻は慶応を卒業し、美しい容姿に穏やかな性格、と絵に描いたようなお嬢様。裕福な美男美女が東京23区内に新築の一戸建てを購入し、まさに幸福で理想的な生活を手に入れた。そこに忍び寄る残忍な殺人者。
全てを奪われた夫婦は、さらりと表面を撫でただけでは語られない様々な過去を持っていた。

誰しも持っているような他愛のないエピソードではあるけれど、虚栄心とプライドにまみれた男と女の姿がくっきりと浮かび上がってきて、冒頭から語られる言葉の一つ一つが徐々に深い意味を持ってくると言う、新しい形のサスペンスでした。
噂話程度の話ではあるのだけれど、それぞれに微妙に含みを持ち、あるいはかなり利己的な分析によって右往左往する夫婦それぞれの姿が、やがて真相に迫っていくと言う読み出したら止まらないストーリー展開でした。

その合間に挟まれる「いもうと」と言う立場の独白。これが絶妙なバランスで物語の中心を走っていきます。この人は誰だろう、どこにどう絡んでくるのか。誰のいもうとなのか。

そして最後に、冒頭の文章から一本の道筋がさっと引かれていくのです。

知ってしまえば何てことないストーリーではあるのですが、そこに渦巻くそれぞれの意識やプライド、偏見、生い立ち、そう言ったものが複雑に絡み合って人格が形成されていくのだ、と妙な感慨が残りました。自分が残してきた足跡は、後に語られるとどんな物語になるのか。人の口から語られるものほど、曖昧で不確かなものはない。ただ、そこに自分たちは日々生きているのだ。そんなことを考えさせられる、興味深い作品でした。

映画は2/18に公開。あんまりセンセーショナルでなくて、静かに物語に入って行きたいな・・・



 

林真理子著「中島ハルコはまだ懲りてない!」。シリーズ2作目です。

53歳の女社長中島ハルコは、余計なお金は出さないことを徹底しているバブル時代を生き抜いて来た個性(アク?!)の強い女。 
そんなハルコと腐れ縁、なぜか一緒にいることになるしがないグルメライターの菊池いづみ。 
今回は彼女の恋愛模様も槍玉に上がり、ますますパワーアップしたハルコの痛快なお悩み解決物語!

こんなアラフィフが周りにいたら、歳取るの怖くないだろうなーなんて思う。

中島ハルコはまだ懲りてない!
林 真理子
文藝春秋
2016-07-11

 
ハルコさんは面倒な恋愛はNOとばかりに、イケてる紳士と長年の不倫関係にあるのだけれど、他人に対する恋愛にはとことん厳しく、モヤモヤしている女の悩みをバサバサと爽快に斬っていく。

中でも、50歳を過ぎた女の体はそれはもう魅力的なのよーというくだり・・・本当?!
何だか己の体を見下ろして、そんな悪くないかもねーなんて思わざるを得ない(笑)

確かに若さは二度と手に入らないとっておきの魅力ではあるけれど、年齢を重ねてこその凄みってもんがありますよねぇ、きっと。
ただ単に憂いてばかりでもなく、高飛車なわけでもなく、ちゃんと冷静に物事を判断しているハルコさん。だからこそ説得力があるのだろうなぁ。

続編が今から楽しみ!

まずはこちらからどうぞ・・・
中島ハルコの恋愛相談室
林 真理子
文藝春秋
2015-05-28

 

お正月あけてから、気分的にアウトドアではなくかなりインドアだったので(笑)早めに布団に入って本を読んでました。

最初に読んだのは・・・


 

前回、愛猫であるたろちゃんを亡くしたアキコは、悲しみから脱出することなく日々暮らしている。同時に、軌道に乗り一時期の熱狂ぶりが落ち着いて来た店の今後を悩み始める。

変わっていく街並み、長らく店を続けて来た近所の喫茶店のママさんの意外な悩み、長く淡々と続けているイタリア料理店の夫婦との交流などを通し、アキコは自分の悩みの本当の意味を知っていく。

新年にふさわしい、穏やかなお話でした。

このドラマ大好きだったので、また続きを放映して欲しいなぁ。 

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