川上弘美著「このあたりの人たち」を読みました。

8年の歳月をかけて文芸誌で連載した物語を紡いだ短編集。
もう冒頭から何とも言えない世界が広がっていきます。ただ、こちらを引き離すというよりは、とても絶妙な距離感で、架空の街の架空のエピソードに架空と知りつつも引き込まれていき、「お」と思わせてくれるポイントがひっそりと投げ込まれている・・・これを書いているとき、作者の川上さんはすごく楽しんでいたんじゃないかなぁと思います。

劇的な何かがある訳でもなく、ものすごい感動に放り込まれる訳ではないけれど、ちょっと夢の世界で知ったような知らなかったような街に迷い込んだ、そんな読後感がいいです。

目覚めたらそこにはまた現実が開けてくる。そんな明け方のような一冊です。


このあたりの人たち (Switch library)
川上 弘美
スイッチパブリッシング
2016-06-29