読後感想文〜書評show〜

フィクション大好き!こよなく本を愛するLULUがありのまま、感じたままに本を紹介します。好きな作家は、吉田修一さん、津村記久子さん。

2016年02月

荻原浩著「花のさくら通り」を読みました。

ユニバーサル広告社は倒産寸前。資金繰りに困った社長はついにオフィスを寂れた商店街の一角に移転。そこはイメージが大切な広告社にあるまじき、シャッター通りだった。
ひょんなところから、惰性で続けているお祭りのチラシを頼まれた面々は、街の活性化にも一役買うことになり、知識と経験を武器に商店会の面々に提案をしていくのだが、頭の固い年寄り店主と新参者の若いオーナーたちの間に挟まれ、右往左往することになる。

ユニバーサル広告シリーズの第三弾とのことですが、実は今作が初めて。ただそんなことは気にせずにどんどん読み進められました。
寂れた街に巣食う問題点、それをただ外側から解決するのではなくて全体を巻き込み一緒に成長していくというストーリーが爽快な物語でした。
傾きかけている広告社。己のプライドはあるけれど、時にはそれを曲げ堪えなくてはならない局面もある。ただし、負け続きなのではなくて「ここ」という境界線は誰しも持っている。個性的な社員とそれをまとめるちょっとお茶目なところもある社長。その人間関係も魅力的でしたし、商店街を立て直すため全ての店舗を巻き込むことがいかに難しいか・・・今の地方が抱える問題の答えがもしかしたら隠れているかもしれません。

問題を外側からも、内側からも見極めることが重要で、だからこそ広告社の杉山たちも時に空回りしながら成長していくのです。

完全に復活しないまでも、商店街全体がまとまっていく様は痛快でスッキリします。
それぞれが抱える個人的な事情にも魅力あるストーリーが多々あり、飽きさせません。

人の裏側がどうのとか、予想もつかないどんでん返し、後味の悪いミステリーなどにほとほと疲れてしまった読者にはオススメ。清涼剤となって、読書意欲をかき立ててくれるでしょう。


 

奥田英朗著「我が家のヒミツ」を読みました。「我が家の問題」に続く、我が家シリーズ。

家族や人とのつながりをヒミツというテーマに乗せて綴る6つの短編集。
今回特に良かったと思えるのが「手紙に乗せて」。

会社員2年目の亨は、母を突然亡くしたことで妹、父親と家族三人暮らしになる。
これまで家族の中心となって皆を結びつけてくれた存在を亡くし、家族は慣れないながらも寄り添って生活していくのだが、想像以上に父の落胆は激しく、亨たちを戸惑わせていた。そんな時、親身になってくれたのは同じ経験をしてきた者たち。大人として、経験者として、父親に差し伸べられた手は亨の心も温かくしていく。


亨の周囲の同年代の若者はナチュラルに鈍感で、それは「経験があるかないか」の違いだけなのだけれど、結局これに解決があるわけではない。心の中のことは想像以上に複雑で、それはもう他人にはわからないことなのだけれど、同じ立場に立ったことがある者同士だけに通じる言葉というものがあるんだと改めて感じました。
特に、ここに出てくる手紙の存在がいい。世の中にいろんな表現方法があるのだけれど、手でしたためた言葉に勝るものはないのかもしれません。


「妊婦と隣人」は一転して、ミステリーなのかと思える展開に思わず笑ってしまうようなラスト・・・なかなかウイットに富んだ話で面白く読みました。

奥田さんの小説はあまりスカッとした解決やラストがあるわけではありません。それは時に心をしくしくと締め上げるのですが、「我が家のヒミツ」はタッチはライトながらも奥田節は健在だなと思わされます。物足りない物語もあるのですが、それは奥田さんの毒に当てられたからなのか。
とても読みやすいので、あまり小説に親しみのない方でも楽しめると思います。ぜひ奥田ワールドの入口として手をつけてみてください。




 

林真理子著「中島ハルコの恋愛相談室」を読みました。

可愛い表紙とは裏腹に、バッサバサと人を斬っていく中島ハルコの語り口に、ぐいぐい引き込まれてあっという間に読んでしまいます。

中島ハルコは50人ほどの会社の代表を勤める52歳。美容系の仕事に携わっているだけあって、自分の容姿に自信たっぷり、そしてきっちりとした信念を持って公私ともに充実した生活を送っている。
その生き方に共感した、彼女のファンは数知れず。
一見、ただのビックマウスかなと思いきや、相談事に持論を展開する彼女の背景にはきっと、様々な経験があったからこそと思わされます。
「でしょう?」と胸を張って自慢話を展開する彼女ですが、時折見せる可愛らしい一面にも好感が持てました。

欲を言えば、相談をして彼女の言うことを「はぁ」と戸惑いながらも聞き入れた人たちがその後どうなったのかということを展開してもらえるともっと良かったかな。
ただ、鬱屈した毎日に何か突破口が欲しいと思っている人には最適の本。

暗くどっしりとしたフィクションに食傷気味の方には、一粒の清涼剤として心をリセットしてくれる・・・かも。
私もどこかでばったり、こんなパワフルな女性に会って説教されてみたいものです。

中島ハルコの恋愛相談室
林 真理子
文藝春秋
2015-05-28

 

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