越智月子著「お願い離れて、少しだけ。」を読みました。

母と娘、そこになぜか父親は不在で、お互いがお互いを必要としているのになぜか近すぎて、時には遠すぎてイライラしてうまくいかない。そんな女同士の人間関係を様々な形であぶり出す本作。

人1人の胸の内など、到底他人に分かるはずもなく、それは母と娘であっても同じ。誰かにとって辛いことは誰かにとっては快感だったりもする。
その一番近い関係性である家族、母娘。

母性というものが世の中に存在するとしても、どうも自分には実感として伝わってこない。
愛された記憶がない、愛し方がわからない。でも認めて欲しい。
あって当然と思われている母性の意外な落とし穴がここには込められています。

確かに、母親からは無二の愛情を注がれて当然という風潮はあるように思う。それが父親であれば少しぐらい子供っぽいところがあってもしょうがないで済まされる、けれど母親は違う。
自分の中に子を宿し、その手の中に抱いた時から無償の愛を注ぐことを当然とされる。それに戸惑い、求め、そして落胆する女たち。

そう、母親であろうと娘であろうと、そこには1人の人間としてのそれぞれの意思がある。心がある。

それを忘れてしまうと、苦しめて求めすぎて疲れてしまうのかもしれない。

私には与える愛情の行き先を結局作れなかったけれど、過去に母親に対して少なからず反抗心のようなものが湧き上がった記憶があり、それが何に起因するのかよくわからないままではある。
でもそれが単なる成長の過程であったと信じたい・・・と今更に思う。

母娘関係に悩んでいる方には、少し気持ちが楽になるかもしれません。決してスッキリと解決するわけではないのだけれど、世間の呪縛からはほんの少し離れられる・・・かも。