窪美澄著「アカガミ」を読みました。

恋愛に対しても生きることに対しても無気力な若者。それは東京オリンピックを境により顕著になり、10代20代の若者の自殺者は増え続け、結婚はおろか恋愛すら嫌悪されるものとなった。
そこで少子化対策の一環として、政府が打ち立てた「アカガミ」という制度。志願した若者は手厚く守られ、独自のシステムによりマッチングされた男女は、そこで恋愛や男女の営みをしていく。そこにいる限り、自分の家族たちも安泰というシステムに取り込まれた若い男女の、恋愛から出産に至るまでの近未来の物語。


少子化問題は今や現代日本の抱える病と言っていいのだけれど、そこに一石を投じるような近未来を描き出した本作。
その制度を「アカガミ」としたところに、この物語の結末が予想されるようなストーリーです。

恋愛そのもの、ひいては人と関わることすら面倒で街から若者の姿が消えた。そこで少しでもそれに興味があり、出産や結婚に能動的な人を集め、家族の生活までも保障するというエサをまいて若者を募るこの制度には幾つものハードルがあり、本気でないものは容赦なくふるい落とされていく。

そこであらゆる研究が施されたシステムにより選ばれた最適なパートナーと共に、ある日突然共同生活がスタートする。体調は常に管理され、その人自身の抑揚すらも把握された中で、「妊娠に最適な日」を支持される男女。そこには自然な恋愛や出会いなど皆無なのだけれど、成熟したシステムが導いたパートナーにはそれなりの適合性が備わっている。
いわば、国をあげてのお見合い制度のようなもので、それだけ聞けば微笑ましい対策のような気がするのだけれど、その生活は非常にシステマチックで情緒などを排除した合理的な世界。
若い人たちに蔓延する一定の認識による偏見、「アカガミ」に反対する人たちの声、障害はいくつもあるのだけれど、雑音の遮断された世界ではどこかそれは他人事で、若者は問題に直面するまで自分たちの置かれた立場を知ることは不可能。
民主主義と言いながらも、自分の考えや声を出すことに躊躇のある日本社会。それを巧みに利用した制度づくりには脱帽する一方で、ラストにはもう少し粘りが欲しかったなというのが正直なところです。

ただ、読み込んでいくと、物語の中の若者に蔓延する倦怠が乗り移ったかのようなモヤが頭にかかるのは抑えられず、それは自分の中にもある冷めた部分が反応するからかもしれません。
もしかしてこんな世の中になるのかもしれない・・・そんなリアリティを含んだ近未来ストーリー、非常に見事でした。



アカガミ
窪美澄
河出書房新社
2016-04-09



アカガミ 試し読み増量版
窪美澄
河出書房新社
2016-04-08