綿矢りさ著「ウォーク・イン・クローゼット」を読みました。表題作他1作を含む中編集。

まず、収録作品の「いなか、の、すとーかー」。
最近売れだしてきた若手陶芸家石居は、ドキュメンタリー番組に取り上げられたり、CMの話が決まりそうになったり・・・とアーティストとしては順調な経歴を積み重ねていた。
東京から離れ、一度出た故郷の地に窯を持ち陶芸に打ち込んでいるが、学生の頃から付きまとわれているちょっとイカれた女性ファンから居場所を突き止められ、それから彼女の意味のわからない攻撃に頭を悩ますことになる。


これは・・・綿矢さんご自身何か思うことがあったのかなぁと思わされたお話でした。ちょっと怖くて、石居が怯えていくのがわかるのですが、それがあらぬ方向に転がり始めた頃から石居自身が何と己を振り返るようになっていく。
ちょっと心理の移り変わりがトリッキーでついていけず、ただこれは一般人というよりは自分の就きたい職業についた人特有の感覚なのかなぁと思いました。その突き放し方も含めて、綿矢さんの鮮やかな描き方に感心しました。


そして表題作の「ウォーク・イン・クローゼット」。
洋服で武装して、まだ見ぬ愛しい人のために日々シミュレーションしている会社員の早希。幼馴染で売り出し中のタレントだりあの部屋に自慢げに鎮座するウォーク・イン・クローゼットとそれを彩るハイブランドの洋服たち。二人の友情は濃くも薄くもなりながら東京で続いていたけれど、早希の迷走する私生活とは裏腹に、だりあはあるスキャンダルを抱えていた。

早希は、自分を幸せにしてくれる王子様を日々探しているのだけれど、いつも浮ついている彼女には次々と男が現れて消えていく。落ち込み、また奮起しながらも彼女が武装すればするほど、自分自身をおとしめていく。
普通に幸せになりたいと願いながら、なぜか違う方向に向かってしまう若い女性特有の悩みを独特の感性で描く今作。早希とは違い今では強い信念のもとに成功への階段を登りつつあっただりあもまた、理想とは違う生き方を選ぶ自分を止められない。

人生に正解などなくて、誰しも右往左往しているのだけれど、それが若さゆえの無鉄砲さと相まって清々しい読後感に浸れるお話でした。
早希の武装した姿に気づくことなく、自らの目標にひたすらに向かおうとする男たちとの温度差と、彼女自身気づくことのなかった自分の魅力を胸いっぱい吸わせてくれるような周囲の愛情にホッとするラスト。
余談ですが・・・完璧な容姿を武器にテレビで堂々とコメントして人気を獲得するだりあは菜々緒がいいのじゃないかなぁ・・・ドラマ化するときには是非配役してほしい。



ウォーク・イン・クローゼット
綿矢 りさ
講談社
2015-10-29