桂望実著「僕とおじさんの朝ごはん」を読みました。


ケータリングを生業としているバツイチの健一は、いつもどこか気の抜けたような心持ちでいて、仕事も適度にやり過ごすのが常。中身は適当なのに器用に盛り付けをすることでリピーターを増やしていた。 
そんな日々の中、偶然知り合った重い病気に苦しむ一人の少年と、にわかに囁かれている「楽に死ねる薬」の存在が健一のやる気のない日々に変化をもたらしていく。


短いセンテンスで視点が変わっていく本作。根底にあるのは、健一の「楽が一番」という考えが徐々に変化していくストーリーなのですが、様々な人を通して描かれることにより、健一の人となりがより明確に伝わってきます。
健一は離婚する時ですら、あまり感慨深い気持ちにならなかった。
ただ、そんな性分になるには相応の理由があり、まだそこから抜け出せていないのだった。
そこに風変わりな大学時代の教授とのエピソードと、たびたび楽に死ねる薬を持つ「冥土の料理人」だと思われてしまうことが絶妙に絡み合って、彼の本質に効いてくるのです。

昔から器用にこなせた料理。人に食べてもらう喜びは確かにあったはずなのに無気力な健一はそれすら忘れていた。

ふらふらと現実を漂っていた健一は、様々な人から気持ちをかけられ、導いてもらうことにより、かつての気力を取り戻していく。

題名の「朝ごはん」。最初はよくわからなかったのですが、読み終わった後でじわじわ効いてきます。
さらりと読めるのに、後にはこれまでと違う味が残る・・・そんな小説でした。


 
僕とおじさんの朝ごはん
桂 望実
中央公論新社
2015-02-24