三浦しをん著「政と源」を読みました。

下町に住む、国政と源二郎。下町に住む幼馴染同士だが、その生き方は正反対。
堅実に銀行を勤め上げて定年を迎えた国政。つまみかんざし職人として一流の腕を持ちつつ飄々と日々を生きている源二郎。ただ、妻に愛想を尽かされた国政と、愛する妻に先立たれた源二郎はともに現在一人暮らしをする老齢の身分。
お互い何だかかんだ言いながらも、一番気にかけている。
ただ家族のためと働いてきた国政は、妻にも娘にも疎ましがられる一方、弟子を取った源二郎はその腕で信頼を寄せられる境遇で、国政は心中穏やかではない。

青年、壮年期をまるで違う生き方をしてきた2人が、改めて老年に差し掛かった時に適度な距離を保ちつつ寄り合って生きる姿を、ユーモアを交えて描く本作。

三浦しをんさんらしい、生活の匂いが感じられるような独特の空気が秀逸です。

決してベタベタしていないのですが、ちゃんとここぞという時に駆けつけてくれる。それは一言では言い表せない絶妙な距離感なのですが、そういう生き方というのは粋でこれからの日本には大切な繋がりなのかなと思えます。

源二郎のところに弟子入りをした今時の若者とその彼女を通し、かつての源二郎の大恋愛も描き出され、それぞれに生きてきた歴史をより身近に感じます。
さすがの展開で、最後まで飽きさせない仕掛けがそこここにありました。

映像化するなら・・・はてどんな2人になるのかな。

政と源
三浦 しをん
集英社
2013-08-26