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奥田英朗著「家日和」と「我が家の問題」を読みました。

どちらも、「家族」がテーマの短編集で、「家日和」はいつもの日常の中に投じられたちょっとした事件をきっかけに、希望を見出した人たちのお話。
中でも面白かったが「ここが青山」というお話。

裕輔はある日、勤める会社の朝礼で突然倒産したことを知らされる。それを聞いた妻厚子は、妊娠を機に退職した会社に復帰することになり、夫婦逆転の生活がいきなりスタートした。周囲からは、心配や同情の声が寄せられたが、これまで全くタッチしてこなかった「家事」という任務に徐々にやりがいを感じるようになる裕輔。 
不幸な出来事が一転、子供を家を守るという目標に向かいそれぞれに適所に身を置くことになった夫婦の物語。

裕輔が家事にやりがいを見出し、周囲の同情を戸惑いながら受け止める姿がユーモアたっぷりに描かれていました。こんな事件なら、起こってもいいかな。
文庫本「家日和」には、巻末に益田ミリさんのエッセイ漫画が載っていて豪華!!!感激しました。


いっぽう「我が家の問題」では、ちょっとした問題が起こった家族のお話。
家族それぞれに、それぞれのパターンや決まりごと、ルールがあって、それは他の家族には当てはまらない、そんなことを見事に描いたお話です。

一人が長かったため、結婚した途端に妻という女と毎日を過ごすことになり、あれこれ世話を焼かれることに鬱陶しさを感じ始めた夫。
ふとした瞬間に夫の、会社での軽い扱われ方を知った妻。
母親は離婚したいのかもしれない、両親の秘密をふと知ってしまった娘。
突然UFOと交信していると言い出した夫。
遠く離れたお互いの実家に、夏休みのほとんどを使って順に里帰りすることになった新婚夫婦。
そして、趣味としてマラソンを始め、徐々にその距離を伸ばしていくようになった妻。

それぞれにパトーナーあるいは親に対して、あれこれと悪い空想を巡らせては落ち込み、確かめようとするもためらい、悶々と日々を過ごす。
他に確かめたくてもその違いに悩み、言えないと悩み、悩みの渦中にいる人の 辛い心のうちが丁寧に描かれています。

とくに、お互いの実家に帰ることになった新婚夫婦の、それぞれの想いに興味をそそられた「里帰り」。なるほど、そんなふうに考えたこともなかったな〜と周囲の反応ともあわせて楽しく読みました。こちらは最後には希望の光が見えてくるのです。

短編なので非常に読みやすく、あっという間に読了。あいからず奥田さんの女性の気持ちの描写に感動。なぜにあんなふうに事細かにわかってしまうのかなぁ。