読後感想文〜書評show〜

フィクション大好き!こよなく本を愛するLULUがありのまま、感じたままに本を紹介します。好きな作家は、吉田修一さん、津村記久子さん。

大島崇裕著「問題物件」を読みました。

業界大手の大島不動産の総務部に偶然にも入社できた若宮恵美子に与えられた仕事は、事故で急逝した前社長の1人息子で重い病に侵されている雅弘の世話をすることだった。
ところが社長の弟である現社長との確執による派閥争いのあおりを受け、恵美子は突然役員である雅弘を室長に据えた販売特別室に異動となってしまう。
病床の雅弘を追い出そうとする作戦を阻止するため、問題とされる賃貸物件のクレーム処理という無理難題を強いられる部署で奮闘することになった恵美子。ただ、無茶な依頼を解決するすべもなく途方に暮れていると突然、探偵と名乗る犬頭光太郎という男が現れる。その行動力と不思議な力を秘めた犬頭に指示されながら、恵美子は雅弘のために奮闘することを誓う。


不動産関係の会社で仕事をしていたこともあったので、この「問題物件」というタイトルに惹かれました。
難しい病に侵され闘病中の雅弘を救うため、恵美子は目の前に突きつけられた理不尽な厄介ごとに立ち向かうわけなのですが、解決に向かうための面倒なプロセスはスーパーマンである犬頭によってサクサクと割愛できてしまうというミステリーにあるまじき離れ業をやってのけます。

犬頭の能力はまだ底知れないものがあり、彼の力が唯一及ばないのが「雅弘の病気の完治」というよくできたお話。
販売特別室の失態を待ちわびる、現社長派の面々。雅弘の完治に一縷の望みを託している前社長派、この二つの勢力に翻弄されながらも、雅弘を守るために問題解決に全力を尽くす恵美子と犬頭。

この犬頭の正体は割と早くからわかってしまうのですが、謎解きの過程よりも結果に重きを置いたミステリーで、いろいろなことが後半に向かうにつれしっくりくる、という流れになっていました。
難しいことを考えないで、さらっと読めるエンターテイメント。これ、ドラマ化してほしいなぁ。

どうやら続編もあるらしいので、ぜひチェックしたい。

問題物件 (光文社文庫)
大倉 崇裕
光文社
2016-07-12






大倉さんって、檀れい主演でドラマ化された福家警部補シリーズの著者だったんですね。



 

群ようこ著「パンとスープとネコ日和」を読みました。

wowowでやっていたドラマが大好きで、もう何回も見ていましたので、小説はどんな感じかなと興味津々でした。


アキコは父親の顔を知らず、食堂を営む母と2人暮らしの出版会社勤務の女性。
自宅の一階にある店で酔っ払って客と騒ぐ母親のことが好きになれず、アキコはなるべく店とは関わらず生きてきた。
ただ、その母が突然この世を去り、自分が本意ではない経理部署に異動になることを知ったことで会社を辞め、食堂を大胆に改装して店をオープンすることを決意する。ただ母親が大事にしてきた町の食堂ではなく、全く違う自分なりの店を作っていくアキコ。
そこには様々な葛藤、出会いと別れがあった。


ドラマ版は「かもめ食堂」のテイストが色濃くあったので、小説よりは淡々としたイメージ。
主演のアキコを小林聡美さん、頼りになるしまちゃんが伽奈さんということで、小説が先ならもう少し別のイメージを持っていたかも。
小林聡美さんゆえに、小説の中にあるアキコのジメッとしたエピソードや心のうちはうまく丸めて独特の世界を守っていました。

近くにあったらいいなぁと思える、素材にこだわり、味も極力素材の味を守ろうと薄味にしているアキコのお店。
同じようなナチュラルテイストの女性が集まってくることに疑問を抱きつつ、かつての常連さんが離れてしまったことにも申し訳なさを感じ始めるアキコ。
何も言わずに突然いなくなった母親の秘密をひょんな事から知ることになるけれど、同時に大切なネコがいなくなった弱さをそのことで癒されるというエピソードは微笑ましくも暖かい。
ちょっと同じような気持ちがぐるぐると旋回するところは、イラついたりもするのですが、それがまたアキコという女性の内面を印象付ける意味もあり、ドラマよりもより人々のキャラクターが感じられます。

アキコが母親と折り合えずに、葛藤する姿は女性としては共感するところもありました。

ドラマ版、また見たくなってしまったなぁ。

DVD発売していましたね。









 

紗倉まな著「最低。」を読みました。

スカウトマンと関係を持ったことでふっと足を踏み入れた女、会社が倒産した時に出会った男に誘われて制作側になった男とその男と一緒にいた女、セックスレスの夫との関係に不満を抱き気づくと自らを捧げていた女、母親が昔そうだったという少女・・・AV業界を軸に揺れ動く男女の関係を、現役AV女優が描く。

AV業界に足を踏み入れていく男女の姿を、決して堕ちたという視点ではなく、日常の延長のように描いた本作。あまり気持ちのいい描写ではない部分もあり、何となく胸がざわつくようなストーリーでした。
本当のところはわからないけれど、何か内側からのぞいているような書き方だったので後から調べると、作者が現役のAV女優(セクシータレントという言い方の方が正しいのでしょうか)であることがわかりました。 

ここでAV女優になっていく人たちは、決してお金のためというわけではなく、精神的な欠乏感から求めているようなところがあります。
周囲には決して理解されず、孤独と戦っていくことになることを、あまり躊躇なく選んでいる。それはもうすでに孤独で不安だから。
最初はわけもわからず飛び込んだけれど、いつの間にかその中にどっぷり浸かっていた制作側の石村という男が、その全てを包み込んで静かに立っている、そんな印象です。
 
読後感がすっきりしたわけではないけれど、このストーリーにしっくり来るようなタイミングって女性の人生の中には瞬間的にはあるものじゃないのかなと思えました。 女性の欲望が実にストレートに素直に描かれています。


最低。
紗倉 まな
KADOKAWA/メディアファクトリー
2016-02-12



 

↑このページのトップヘ