読後感想文〜書評show〜

フィクション大好き!こよなく本を愛するLULUがありのまま、感じたままに本を紹介します。好きな作家は、吉田修一さん、津村記久子さん。

原田ひ香著「ランチ酒」を読みました。


ランチ酒
原田ひ香
祥伝社
2017-11-14



犬森祥子は一人暮らしのバツイチ女性。
今は昔馴染みの亀山が営む「お助け本舗」の主な仕事「見守り屋」の一員として働いている。勤務時間は深夜から早朝になることが多く、文字通り「見守る」ことが仕事。
そんな時間帯に勤務する祥子は、1日のうち最も力を入れているのが「ランチとお酒」。今日もどんなお酒にどんな食事を合わせるのか、ネットの情報も駆使し頭を悩ませる・・・


題からして、女一人でランチとお酒が両方楽しめる店を紹介しているようなライトな話なのかと思いきや、祥子が抱える問題、不思議な業態に助けを求めてくる人々の裏事情など、とても深いところにまで話は及びます。
見守る、というのは受け身の仕事であり、積極的に資格や能力を駆使して挑むという働き方ではないのだけれど、人生に疲れていた祥子には見事に適した仕事だったのかもしれない。絶妙な距離感が重宝がられ、リピーターも多くなる。
その中で、祥子自身が抱えている問題についても相対する人たちにより、より深く考えることになったり、彼女自身にも変化が起こり、これからも続いて行く日常にひっそりと覚悟を決めることになる。

とても冷静に物事を考えられる祥子なのだけれど、時には友人たちの助けも借り、迷いなから進んで行く。そしてとてもさっぱりした気持ちで美味しいお酒とランチに身を沈める。

ランチの店ごとで話が分かれているのだけれど、中でもうなぎを食べる「不動前 うな重」の章がとても好きです。祖母と母の介護をしている陽菜の幸せを、時には稚拙に時には年上らしくひたすらに願う祥子が微笑ましい。

これを読むと昼間のお酒、嗜みたくなります。それでなくてもランチにお酒が飲めるお店ってなかなかないんですよねー。東京ならもっとあるのかな。
平日の昼間となるとハードル高いし、車不可欠の田舎だとその後の予定も絡んできてなおハードル高し。

ただ、たまにはいいよなぁと浸れる幸せがあってもいいなとは思う。

原田ひ香さんと言えば、この話も秀逸でした。彼女は都会の隙間産業的な特殊な業態を見つけるのが得意なのだろうなぁ。



これもなかなか面白かった。断捨離なんてもんじゃない・・・



このブログ更新久しぶりです・・・読書していなかったわけではないのですが(汗)読んでも書くまでに至らず、すっかり月日が経過して・・・と言うことが多かったです。反省。
これからもこんな不定期なブログをお願いします。

さて、お正月休みにじっくり読もうと買っておいた東野圭吾人気シリーズ三作目「マスカレードナイト」をようやく読めました。
休日前でないと眠れなくなる恐れがあるので、読み始めたくないと言う・・・今作もその危惧を現実にするあたり、さすが東野作品です。


警察に殺人事件に関する密告が届いた。それはあるアパートの一室で女性が殺されたのではないか、と言うものだった。 密告通り若い女性の遺体が発見されたのだが、その殺され方や本人の身辺に至るまで謎に包まれ捜査は難航していた。
そこへさらに殺害を知ると思われる人物から密告が届けられる。それは犯人が大晦日のホテルのカウントダウン仮装パーティーに現れると言うものだった。
そのホテルとはコルテシア東京。過去の事件でホテルマンとして潜入捜査を成功させた捜査一課の新田刑事にその命が下り、再び素晴らしいホテルマン山岸尚美と顔をあわせる事になる。果たして犯人は現れるのか、密告者は犯人とどう言う関係なのか。


ホテルマンとしてのプライドと信念を強く持つ山岸尚美と、刑事とは思えないほどスマートな身のこなし、語学堪能、容姿端麗な新田刑事がホテルを舞台とする捜査でタッグを組む人気シリーズの第三弾。
ホテルとは仮面を被った人間たちが行き交う場所。そこで最高のおもてなしと最大の努力をする事こそ真のホテルマンの証、と日々様々な相談が持ち込まれるコンシェルジュという役目をその機知に飛んだ采配で見事にこなしている山岸尚美はその経験を生かした視線から、犯人逮捕に協力をする。
新田はじめ刑事たちが追っているのはもちろん殺人犯ではあるのだけれど、密告者と犯人の関係性や被害者との関わりが全く見えない中、誰もが秘密を抱えているように見えるホテルという場所で1つ1つの可能性を潰しては持ち込み、限界の中必死で犯人にたどり着こうと奮闘する。

ここで行き交う人々は誰もが怪しく見え不可思議な行動を取り、その1つ1つを山岸尚美を始めホテルという特殊な場所を舞台として、全く無関係であったり、謎が増えたりを繰り返していくのですが、その1つ1つの細やかなストーリー展開が予想を立てさせない様々な伏線となって、読むものを混乱に陥れます。
新田刑事と対照的ではあるがその観察眼と執念で真相にたどり着く能勢刑事、ホテルマンとしてのプライドは頑固までに実直、裏表のはっきりした公家顔の氏原、など個性あふれる面々が発する言葉によって、時に真実が深く、時に嘘が暴かれ、徐々にクライマックスのカウントダウンパーティーへと緊張感が高められていく。

犯人逮捕への大きな障害となる、「仮装した人々が集まる大規模なパーティー」を最終舞台とする、犯人と密告者、そして警察とホテルの戦いはどのようなラストを迎えるのか。

やや最後は説明的な部分が多くなりはしたものの、人々の証言の裏と表、立場の違いによる感じ方の差、巧妙に隠された真の動機など、読み応え十分でした。
 
またマスカレードホテルから読みたくなってしまったなぁ・・・

それにしても映画では、この新田刑事をキムタクとは・・・キムタク嫌いではないのですが、ちょっとイメージ違うんだよなぁ。山岸尚美の長澤まさみも・・・ううむ。


 




 

 
 

先日、映画「世界から猫が消えたなら」を観たので、その勢いで川村元気さんの「四月になれば彼女は」を読みました。


何と言ったらいいんだろう・・・すごく愛について絶望し、少ない希望に寄り添いたくなる、そんなお話でした。

四月になれば彼女は
川村 元気
文藝春秋
2016-11-04

 

人生で初めて付き合った、と思っていた人から藤代の元に手紙が届く。彼女は異国の地でなぜ彼に手紙を書きたくなったのか。
藤代とハルの恋物語を回想しながら、藤代の決して熱いとは言えない弥生との現在の恋が進行する。
人はなぜ人と人生を歩もうと思うのか。そして、若い頃に確かに手の中にあった恋愛はいつ消えて無くなってしまうのか。それが情になってしまうのは、果たして寂しいことなのか。
人を好きになることが億劫になる、面倒になる、1人の方が数倍気楽だと思えてしまう。
ただ、なぜかそう思っていても、時には寄り添いたいと強く願ってしまう。
そうした矛盾した気持ちと、それでも求めてしまう「自分を愛したい、人を愛したい」というまっすぐな欲望を、切なく無様に追い続けた、そんな気持ちのする物語でした。

人は死を意識して初めて、生に対する希望に気づく。
そして愛を失っているからこそ、愛を知る。

正直、この主人公が見たような希望を自分が体験できるかはわからない。
本当に今それを持ち合わせているかどうかもわからない。ただ、求め、共有し、そして喪失するからこそ、より愛情が色濃く感じるというのは本当かもしれません。

過去に関わった人たちのところに、ほんの少しでもかけらが残っていたとしたら、自分は本当に生きて恋して来た意味があるのかなぁとそんな風に思えました。

胸を焦がし、眠れないような愛おしさ、というのはもう経験できないのかもしれないけれど、変化して行く関係の中に大切な何かがある限り、孤独とは決して切り離せないのだと思えます。
大事なものがあるということは、悲しさと幸せを同時に手に入れたということかもしれません。

 

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