読後感想文〜書評show〜

フィクション大好き!こよなく本を愛するLULUがありのまま、感じたままに本を紹介します。好きな作家は、吉田修一さん、津村記久子さん。

バラエティにも時々出てくる西村さん。今作では芥川賞を受賞しましたが、飾らない(と言えばいいのか)人柄がそのまま小説の世界に生きているような、そんな物語です。今作は、さらっとすぐに読めました。

〜ストーリー〜
19歳の北町貫多は、父親の性犯罪がもとで家族崩壊。1人暮らしの安アパートで日雇いの仕事に行くか行かないかをタバコをふかしながら考えあぐねるような毎日。日雇いで稼いだお金は飲み代と風俗に消えていく。家賃を払えず飛び出した部屋もいくつになるか知れないような日々。
そこへ、大学生の日下部が日雇いのアルバイトをしにやってきて貫多に親しげな笑顔を向けてくる。貫多にとっては久しぶりに言葉を交わし、心を開ける相手となったのだが、元来大学にも行き家庭にも問題のない彼とは次第にズレが生じてくる。


主人公が本当にどうしようもないオハナシなんです。
もう逆に清々しいほどに自己中心的で自分勝手。小心者のクセに虚勢を張ったら止まらない、口から飛び出た言葉を取り繕う術もなく、へいこらと首をすくめてやり過ごすしか手だてがない。

ただ、人間の内側にある欲望や、他人をののしり独りごちる言葉は、それはそれは他人に聞かせられるわけのない、醜いものに違いないのですが、案外人の内側に渦巻くものはこんなもので、それを単純に露にしただけかもしれません。

コンプレックスに感じていること、苦い体験、それらをさっぱり忘れて生きていくことなど不可能ですし、いい意味でも悪い意味でも人はそれに縛られて人生という旅をひたすらに進んでいくしかない。
そこに訪れるのは、一抹の不安、不幸への畏れ、転落という落とし穴の見えない威圧感。それを充分に意識しながら、おのれの幸せをただひたすらに祈って生きる。
そこに努力ややり遂げた充足感があれば、ずっと心穏やかに行きていけるし自分を信用できるのかもしれませんが、まだまだできるのではないか、どうしてもやり遂げられないことへの不信感は知らないうちに自分の心を蝕んでいる。
どんな世代にも、男女関係なくこういう焦りは訪れるものだと思います。それに存分に浸りきって、「さ、頑張ろ」とすっと思えました。

文庫本では、石原慎太郎さんの解説がありましたが、これも一読の価値ありです。

池井戸作品は、続けて読むとちょっと飽きてきちゃうのですが、知識が深い方なのだろうなというストーリー展開が魅力です。

この話は、下町のおじさまがロケットを造るとかいう話なのかな・・・と誤解してまして、男くさい話なのかと思いながら読み進めましたが、予想と違い情熱と意欲に満ちあふれていて、読んでて気持ちよいオハナシでした。

〜ストーリー〜
佃製作所の社長は、元宇宙化学開発機構の研究員。ロケット打ち上げ失敗による引責もあり現役を退いたことで、父親の会社を継ぐことにし、業績を伸ばしていた。
ただ、中小企業への世間の風当たりは強く、契約打ち切り、訴訟問題・・・と問題は山積していき、ついには倒産という文字もちらつき始める。
その中でも、自社ブランド、自社品質に自信を持つ佃は、社員からも反感を買うような研究開発に巨額を投じ、ついにはそれで取得した特許を巡り、超一流企業のロケット事業に参加できる希望が出てくる。
佃は研究者魂がうずき、やがてそれは全社員のプライドを賭けた大きなプロジェクトになっていく。


もう爽快です。中小企業に勤める社員たち。給料も一流企業に比べたら安いけれど、自分たちのブランドと技術には誇りと自信を持っている。
会社が危機に直面しているというのに、夢を叶えようと意地を張る社長に反感を持ちながらもそのプライドを刺激されて大きなプロジェクトに賭けようという気持ちになっていく。

決して夢ばかりを語るのではなく、そして現実の苦さばかりが胸を押しつぶすでもなく、絶妙なタイミングでいいことも悪いこともやってきます。荒波に揉まれる舟のように、会社は風雨に煽られ右往左往する。

決して良好とは言えない環境の中で、一度手放した夢を再び叶えるチャンスがやってくる。今やるべきことか分からないけれど、このチャンスは今しかない。
悩んだとしても、自分にとって理想的な結末があるのならば、それに没頭したい。

窮地においやられる企業と銀行とのやりとり、特許出願に四苦八苦する企業たち、すごく詳細に、分かりやすく描かれていて、勉強にもなります。

そうだよな。自分が誇りを持てる会社で、自信に満ちた仕事をする。そうできれば本当に幸せなんだろうな。

津村さんも大好きな作家さんです。
この本は、大きく分けて「職場の作法」と、「とにかくうちに帰ります」の二本立てですが、そのうちの「職場の作法」はさらに5つほどの話にわかれています。

もう、とにかく面白い。小説読んで声に出して笑っちゃったのは久しぶりではないでしょうか。
 
〜ストーリー〜
とある小さな中小企業とおぼしき会社で働くワタシ、鳥飼。同僚の、きっちり時間管理をして自分の世界を守る落ち着きのある田上さんと、ちょっとマイナーな世界に詳しかったりする優しい独身の先輩浄之内さん2人に囲まれて、どうしようもなかったりする上司や、仕方ないなぁって感じの後輩たちに囲まれたフロアの中の些細なオハナシたち。
 

話は淡々と繰り広げられていくのだけれど、その「淡々」が半端ない「淡々」なのです。
中でも「ブラックホール」というオハナシが、"あるある!こういうことあるよ~"と大きく頷けたと思ったら、後半「やられた~」と爆笑。
もう何てことないのですが、会社員ならば誰しも「あぁ、コレコレ」と思えるのではないでしょうか。
そして、秀逸なのが"バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ"。この題名だけで「何のこっちゃ」ですが、期待を裏切らないテンションで話は進んでいきます。マイナーな世界に、とくに深くもなく首を突っ込んでしまう感覚が、とてもバカバカしくて良い!そして身に覚えがあるよ~こういうことって!と思わず笑っちゃう。

「とにかくうちに帰ります」のほうが笑いは少なめですが、どうしようもない状況で人が消耗していく様は、何だか胸に迫る。そんなとき、優しくできるのかなぁ、自分・・・とふと考えたりして。

津村さんの作品はセンスの良さといいますか、好みに合うと言いますか、すごく面白いので大好きです。
何とも言えない世界観にココロを鷲掴みにされています!また別の本もおいおい紹介していきますね。

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