読後感想文〜書評show〜

フィクション大好き!こよなく本を愛するLULUがありのまま、感じたままに本を紹介します。好きな作家は、吉田修一さん、津村記久子さん。

大好きな吉田修一さんの最新作が発売されると聞いて、当日にゲットしに行きました。
大切に時間をかけて読み進めたいと思いつつ、もう読む手が止まらず結局二日で読んでしまいました・・・始まりからラストまで息つかせぬ展開で世界を飛び回ったような読後感のある大作です。

ウォーターゲーム
吉田 修一
幻冬舎
2018-05-24

 

産業スパイであるAN通信社の諜報員鷹野一彦は、あるダム決壊事件の首謀者を追う任務を請け負った。
依頼者は日本での水道事業民営化の利権獲得により、巨万の富を得ようと画策していた代議士。ダム決壊により国内で民営化をスムーズに遂行しようとするその計画は、利権争いをする誰かの手によってそっくり盗まれたのだ。
このままではダム決壊の首謀者とされ、利権争いどころか人間としての余生を抹殺されかねない事態に代議士はAN通信社に泣きついてきた。
もうすぐ引退という年齢に差し掛かった鷹野が、最後の任務となるかもしれない仕事で様々な国や投資家たちの思惑、裏切り、争い、そして己の感覚を信じて選り分けてきた協力者との間で死闘を繰り広げるシリーズ完結編。


シリーズのスタートである、「太陽は動かない」を読んだ時には吉田さんの作風らしからぬ展開だなと思った記憶がありました。その当時に人気を博していた小説「ジェノサイド」に触発されたのかと失礼な感想を持ったように思います。

ただ、二作目「森は知っている」で鷹野がスパイになった経緯などを読み込むうちにこのシリーズに愛着が湧いてきたのは事実。「情報」という現代では特に価値が見出されることになったもの、その生かし方や殺し方を十分に知り得ているものだけが到達できる世界というものに憧れさえ感じます。
特に安定とは程遠く、己の体と嗅覚だけでのし上がってきたアヤコという女には底知れない魅力を感じますし、結局は一人だけでは生きていけず誰かに頼り頼られながらその動向を見極める判断の鋭さだけで生き残れる世界というものにも強烈に惹かれます。

今回はフィクションと言えどリアリティに富んだ、水道事業民営化の話。
そこに絡む利権争い、誰が舵を握り誰が得をするのか。その戦争には終わりなどなく、誰もが騙し合い蹴落とし、虎視眈々と逆転の可能性を探り合う。
でもそこにはただ「金のため」ではない何かがあり、争いに参加してくるものにはそれぞれのポリシーがあり、それを守ろうと必死になる。
人が生きていくということには常に過酷な選択が付きまとうものだけれど、それがヒリヒリするものであればあるほど闘争心を掻き立てられる人々の、人生を描いた骨太な大作です。
これはもう是非ハードカバーで読んでほしいと思います。
私はまた、シリーズを最初から読んでみたくなりました。(どうやら映画化されるらしい!鷹野は誰が?田岡は?キャストが楽しみでもあり、心配でもある・・・)

太陽は動かない (幻冬舎文庫)
吉田 修一
幻冬舎
2014-08-05



森は知っている
吉田 修一
幻冬舎
2015-04-22



ジェノサイド
高野 和明
角川書店(角川グループパブリッシング)
2011-03-30



 

東野圭吾著「パラレルワールド・ラブストーリー」を読みました。




崇史はバイテック社と言うアメリカに本社のある総合コンピュータメーカーの社員。
同じ会社に勤め中学時代からの親友の智彦がある日、自分が恋をしていた名も知らない女性を恋人として紹介してくる。ショックとともに焦燥感に駆られるが、ある日目が覚めると不思議な感覚とともに、現実と自分との乖離に戸惑いを覚えるようになる。

麻由子は当たり前のように崇史と同棲していて、自分もそれを当然として受け入れている。ただ、何かが違うような気がする。

あれは夢なのか。アメリカの本社に配属になったという智彦とはなぜ疎遠になってしまったのか。
崇史の中に存在する、パラレルワールドに彼は自分自身を探しに行く。


とにかく、ものすごい小説でした。ラブストーリーがミステリーを飲み込んで逆にそれが恐ろしい。
男の嫉妬というものが醜く交錯したとき、現実はどんな歪みを生んで行くのか。

崇史は恋をする、それはすれ違う電車の窓越しに見たほんの数秒間の恋心。ついに告白することさえままならなかった彼女が、まさか親友の恋人だったなんて。

あれ、これは現実なのか。
崇史は悩み迷います。そして徐々に明らかになってくる自分の違和感の正体。
彼は脳機能を研究する目的でエリートとしての人生を親友智彦とともに歩み始める。バーチャルリアリティではなく直接脳に感覚を伝えるという最先端の技術の中にいる彼らは、やがて一人の女性を巡って敵対することになり、その開発の進行がさらなる悲劇を生む。
仕事においても、恋愛においても、崇史の先を行こうとする智彦。足にハンディを背負った智彦のことを親友と思いながらも、微かに感じていた自分の優越を皮肉にも恋愛によって実感してしまう崇史。
 
自分がいる世界が揺らぎ始めたとき、人はどうしようもない虚無感とともにこの手に現実を取り戻したいと念じてしまう。それがどんなに残酷な事実であろうとも。

東野圭吾さんはこれを20代で思いつき、30代で書き上げたそう。これまでに読んだどんなミステリーよりも秀逸。青臭い人間模様の中に、人間誰しもが持っている嫉妬・優越・焦燥という当たり前の感覚をまざまざと見せつけられます。 

映画化されるようですね。玉森くんが崇史、吉岡里帆ちゃんが麻由子、そして智彦が染谷将太さんかな。楽しみ。
 

麻見和史著「警視庁文書捜査官」を読みました。

現在連続ドラマとして放映中の、「未解決の女 警視庁文書捜査官」の原作として注目されていますが、今回読んで・・・これ別物です


 

ドラマでは、文字のことに関してはフェチを超えてマニアを超えて偏屈とも言える捜査には興味のない女上司鳴海を鈴木京香が、自身のペナルティを理由に左遷されてきた体育会系で暑苦しい女矢代を波瑠が演じていて、同じ課にあと2人男がいるという設定なのですが・・・この一冊を読む限り、鳴海は31歳、軽くウェーブのかかったボブカットの気が弱くておとなしい性格と思いきや、文字やメモに関してだけは類い稀なる興味と観察力を発揮し、時には大胆な行動を起こす実は内面に情熱を抱えた女だし、そこにつくことになった矢代巡査部長は鳴海とは年齢の変わらない男性刑事・・・捜査一課に異動になり張り切っていたところ、倉庫番と呼ばれ、殺人事件の捜査では補佐的な役回りを強く言い渡され少々腐っているという役どころ。
鈴木京香演じる鳴海は、偏屈で過去の事件により捜査にできることができなくなったという偏屈な年上女で、常に真っ黒な衣装に自分専用のスペースを確保し、外に出ることを極端に嫌っている。文字や文章に関しての知識深さはやや重なるものの、捜査一課の連中を毛嫌いしていて終始偉そう・・・って、小説と違いすぎる!!
もはや矢代に限っては、性別も違うし!!何となく小説による鳴海のキャラクターを二人で演じ分けているような感じです。

そして今回のこのエピソードは今のところドラマには登場しません。

ある日男の死体が発見され、意味不明なカードとメモが発見されるが、身元すらわからない状況。現場に残された文書を解読することを指示された文書解読班の鳴海と矢代。二人は何とか事件解決に一矢報いたいと張り切るが、予想外に単独行動を取る羽目になり、現場を指揮する古賀に激しく叱責される結果となる。その上見込みを誤り、事件を間違った方向に誘導したことにより、評判を下げる結果となった。
厳しい目が向けられる中、鳴海は少しでもサポートになれればと奔走する。
鳴海の文章心理学の知識と経験が事件の突破口を開く時、二人にも危機が迫っていた。


この二人の関係性もいいですし、wowowなんかでじっくりドラマ化して欲しかったなぁ。
飄々とした係長役の高田純次はハマってるなと思うのですが、鳴海の師匠である先生もいいキャラクターなので是非とも映像化には加わって欲しかった。(ドラマには登場しない様子)

この事件自体は謎が多く、最後まで飽きさせない展開ではありましたが、少々強引な部分とそもそもの動機がちょっと荒い感じもして少し肩透かしだったのは否めません。
ただ、鳴海の推察力や周囲が徐々にそれを受け入れていく様子は見応えがありそうなので、次にドラマ化する時には是非鳴海役をもう少し地味で、貫禄は不要なので確かな演技力のある女優さんにして欲しいなと思います。 

この文書捜査官はシリーズものらしいので、次のも読んでみたいものです。





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